「言葉」が主役のWebサイトで脚本家の人柄と情緒を伝える
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「言葉」が主役のWebサイトで脚本家の人柄と情緒を伝える

脚本家・演出家と聞いてイメージするのは、どんな仕事でしょうか? その仕事の中心にあるのは「言葉」。ていねいに紡がれた言葉を起点に、美しい映像が生まれていきます。

ご紹介するのは、そんな仕事のイメージを体現した、脚本家・演出家の平田研也さんのWebサイトを中心としたクリエイティブです。

平田さんは、数多くの映画やドラマ、CMを手掛け、2009年には『つみきのいえ』で第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞されています。平田さんのサイトでは、「言葉」を主役にしたシンプルなデザインや人柄が伝わってくるような雰囲気が、平田さんの言葉に対する真摯な姿を想像させてくれます。

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担当デザイナーの黒岩莉沙氏は「企業案件では『どんなブランドイメージを伝えるか』を考えるのに対して、平田さんという様々な作品をつくっているクリエイターのイメージを、どのように統合して一つの人格として表すかが難しいところでした」と振り返ります。

どのように「平田さんらしさ」をすくい上げながらビジュアルコミュニケーションに生かしていったのでしょうか。黒岩氏に話を聞きました。

(構成:都田ミツコ/編集:吉田恵理/取材・編集:くいしん

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チーフデザイナー
黒岩 莉沙
94年生まれ。神奈川県出身。専門学校を卒業後デザイン事務所にてエディトリアル/グラフィックデザイナーとして勤務。ファッション誌をメインに多くの書籍を手掛ける。退社後フリーランスで活動しつつ日本各地を旅する。 2020年より株式会社セイタロウデザインに入社。エディトリアルで培ったレイアウト能力やセンスを生かしたデザインを得意とする。

脚本家らしさと人柄を伝える

── 平田研也さんのWebサイトや名刺、SNSツールをつくることになった経緯を教えてください。

平田さんが2021年に独立されるにあたり、「自分の今までの作品を載せるためのWebサイトをデザインしてほしい」とご依頼をいただきました。サイトと一緒に名刺、SNSツールのアイコンなども一式つくってほしいということでした。

Webサイトに関しては、「独立にあたって名刺代わりにクライアントさんに見ていただけるサイトにしたい」と考えられていました。

── 平田さんはなぜセイタロウデザインに依頼されたのでしょうか。

平田さんがお仕事で代表の山崎と繋がりがあり、またセイタロウデザインが手掛けた「HIRAMATSU HOTELS」のWebサイトを気に入っていただいたということで、「雰囲気がすごく好きなので、自分のWebサイトもそういった空気感にしたい」と仰っていました。

── 個人の方のご依頼を受けることは珍しいのですか?

セイタロウデザイン全体では個人の方のご依頼はあまりなく、企業のお仕事がほとんどです。

平田さんの場合は、独立前に株式会社ロボットに所属されていた頃、代表の山崎が一緒のプロジェクトをしていたということと、平田さんの「つみきのいえ」という作品に敬意を抱いていたので、その作品の世界観や平田さんの素晴らしさを伝えるお役に立ちたいという思いで取り組ませていただきました。

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── ビジュアルをつくる際には、伝えたいイメージをどうやって抽出していったのでしょうか?

平田さんのお人柄について山崎からヒアリングしたり、私が作品を拝見して伝わってきたものから「こういう感じがいいんじゃないかな」とイメージを探りながら組み上げていきました。

お人柄について山崎は「とても奥ゆかしい控えめな方」と言っていましたね。平田さんの作品は人の心情がとても丁寧に描かれていて、「心の動きを観る人に納得させられるよう考えながら書かれているんだろうな」と思いました。

平田さんご本人とお話しさせていただいた時も、どういう言い方をするか考えながら話をされる丁寧な方なのだと感じました。

── Webサイトの見せ方はどうやって決まったのでしょうか?

見せ方の部分は「HIRAMATSU HOTELS」のサイトというベンチマークがあったのでスムーズに決まりました。

ひらまつのサイトは、言葉をしっとりと魅せるところや余白の生かし方、情緒的に絵を魅せるような動きが特徴です。「平田さんはこういう部分を気に入ってくださったんだろうな」と感じたところを、私なりに抽出して決めていきました。

「言葉」を主役にしたクリエイティブ

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──  Webサイトのファーストビューが脚本を開いた写真になっていて印象的です。どんなことを意識してつくったのですか?

脚本家らしく「文字をメインに魅せるサイトをつくったら面白いんじゃないか」と考え、言葉を魅せるサイトというコンセプトでつくりました。作品のパンチラインとなるような言葉を平田さんに自ら選んでいただいき、掲載しています。最近のWebサイトでは画像を補うために言葉があるサイトが多いのですが、その逆で言葉をメインにしたサイトをつくろうと思いました。

完全に文字だけのデザインなど、いくつかパターンを出したのち最終的に採用になったのは、言葉を主役にしてそれを補うために絵を入れる案でした。

── ファーストビューをスクロールダウンすると出てくる「はじめまして」の文章は、平田さんのお人柄が伝わりますね。どうやってコピーを考案したのですか?

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Webサイト内の文章は、プロフィールを含めてすべて平田さんにお願いして考えていただきました。「はじめまして」の文章も、いきなり作品を見てもらうより、まずは平田さんの言葉を入れた方が人柄が伝わりやすいと思ったので文章を考えていただきました。

── Webサイトをデザインする上で大切にしたポイントは何ですか?

シンプルなサイトなので、余白が大きすぎても小さすぎてもダメなんです。「どれくらいの空白があって次の絵や文字が出てくるといいかな」と、余白に気をつかってつくりました。言葉が出てくる速度が早すぎても遅すぎてもいけないので、何度もトライして調整しました。また文字の大きさも時間をかけてバランスを見直しています。

── たしかに、ここまで文字が大きく目立つサイトは珍しいかもしれないですね。名刺やロゴも黒岩さんがデザインされたのでしょうか?

名刺とロゴも同時並行でつくって、ロゴは3案ご提案しました。

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この3案のうちの真ん中にある案、平田の「田」を地図記号の「田んぼ」で表し、それに「平」を表す地平線を合わせたアイコンを「Ken Hirata」の文字の下につけた案を気に入っていただいて、採用になりました。

最初は黒一色だったのですが、平田さんから「色を入れたい」とご希望があって緑を入れました。そこでWebサイトにもアクセントになるところに緑を入れることになりました。

ロゴは3パターンをつくったので、画角などに合わせて使い分けていただけるようになっています。

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名刺は縦バージョンと横バージョン合わせて6案提案し、シンプルに白地を生かして真ん中に要素を収めたデザインに決まりました。

── ロゴや名刺でポイントになったのはどこですか?

お名前の表記が今は「Ken Hirata」になっているのですが、最初は「Kenya」まで入れていたんです。でも海外で活動する際に「Ken」の方が伝わりやすいのではという話になり「Ken」のみの表記にしました。

── SNSツールもデザインされたんですよね。

Twitterのヘッダーをデザインしました。脚本や木漏れ日だけものなどいくつかパターンをお出しして、最終的には「脚本家らしさ」があると脚本のバージョンになりました。

自分が思わずブックマークしたくなるものをつくる

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── 企業案件と、今回の個人の方のビジュアルコミュニケーションのクリエイティブではどんな違いがありましたか?

企業案件と比べると「個人のほうが大変かな?」と想像していたのですが、抽出の仕方に違いがあっても、芯が明確であればそれを可視化することは同じ流れなんだなと思いました。

また今回、平田さんにテキストをご用意いただいたのですが、ご自身が言葉を引き出すプロなので非常にスムーズでした。

── 平田さんもプロなので、やりたいことをお互いに理解しあって進められたんですね。Webサイトついて反応はどうでしたか?

平田さんは言葉は多くなかったのですが、すごく気に入って下さっていました。お会いした時にも「すごく脚本家らしいサイトで綺麗だなと思いました」と伝えていただきました。

山崎には「平田さんらしさが出ていて、いいいサイトだね」と言ってもらいました。まわりからも「平田さんの人柄が伝わる」「平田さんに頼んでみたくなる、一緒に仕事をしてみたくなるようなサイト」と言ってもらっています。

── 黒岩さんはデザイナーとしてどんなことを大切にしているのでしょうか?

クライアントに満足してもらうことが第一にありますが、私がいつも意識しているのは、例えば商品だったら「自分が欲しくなるもの」、Webサイトなら「自分が思わずブックマークしたくなるサイト」を意識しながらつくっています。自分が好きになれるかどうかはとても大切にしています。


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