決め手は“モテ”じゃなくて“自分目線の絶対軸”。大人気アイライナー「ルミアグラス」開発秘話
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決め手は“モテ”じゃなくて“自分目線の絶対軸”。大人気アイライナー「ルミアグラス」開発秘話

「LIPSベストコスメ2020下半期 新作カテゴリー賞 アイライナー部門 第1位」
「VOCE月間ランキング2020年10月度アイライナー部門 第1位」

SNS上の投稿が半年間で5,000件以上。数々のアワードを受賞し、大きな反響を呼んだアイライナー。

独自の高機能インクで、アイシャドウの上から使っても滲まず描きやすいと話題の「LUMIURGLAS(ルミアグラス) スキルレスライナー」。2020年9月に一般発売されるとコスメ好きの間でたちまち人気商品となり、冒頭のように高い評価を得ています。

実は「ルミアグラス」は、セイタロウデザインがゼロからブランディングを担当。
株式会社カティグレイスから「ブランドを立ち上げたい」と依頼があったことから、本プロジェクトがスタートしました。コスメブランドをゼロから作り上げ、その第1弾となる商品をヒットに導くまでには、どんな道のりがあったのでしょうか。

コンセプトを掲げていくにあたり意識したのは、「モテ」を売りにするのではなく、自分が美しいと思える「絶対軸」の目線を提案すること。ブランドプロデュースを担当した山崎晴太郎氏(@seiy)にお話を聞きました。

(構成:都田ミツコ/編集:くいしん

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セイタロウデザイン代表取締役、アートディレクター 、デザイナー
山崎 晴太郎
株式会社セイタロウデザイン代表。横浜出身。立教大学卒。京都芸術大学大学院芸術修士。2008年、株式会社セイタロウデザイン設立。企業経営に併走するデザイン戦略設計やデザインコンサルティングを中心にしたブランディング、プロモーション設計を中心に、グラフィック、WEB・空間・プロダクトと多様なチャネルのアートディレクションを手がける。各デザインコンペ審査委員や省庁有識者委員を歴任。 FMヨコハマ84.7「文化百貨店(毎週日曜2430-2500)」メインパーソナリティ。株式会社JMC取締兼CDO。NPO ARTS WORKS理事。東京2020組織委員会、スポーツプレゼンテーション・クリエイティブアドバイザー。

ブランドのコアの部分からクライアントと一緒に作り上げるプロジェクト

── 「ルミアグラス」のブランディングを手掛けられることになった経緯から聞かせてください。

クライアントは、パッケージデザインの納品だけではなく、ブランドのコアの部分から一緒に作り上げてくれるブランドパートナーを探していました。

セイタロウデザインがコスメ関連の実績を多く持っていたことや、先方のご担当者さまが私たちのデザインの世界観を気に入ってくださったことで、ご依頼をいただきました。


── どの段階からお手伝いされたのでしょうか?

クライアントの物作りにかける熱意や商品性能の高さといった強みはあったものの、ブランドの軸となるコンセプトなどはまだ漠然としていたので、本当にゼロに近い状態からのスタートでした。

リキッドアイライナーの製品概要や、バラエティストアの高価格帯で打ち出していく「百貨店品質のプチプラコスメ」という方針があって、でも商品をどう打ち出していくのかは決まっていない状態です。コンセプトから打ち出し方まで、順番に協議して決めていきました。

── では、実際にどうやってブランディングを進めていったのでしょうか?

クライアントが明確なブランディングのイメージを持っていない場合、最初に全体の道筋を提示する必要があります。

まずブランドのアイデンティティとなるコンセプトがあり、その上でブランド名、そして、そのブランドの一個の商品名という構造があること。そこからブランドロゴ、商品のネーミング、パッケージなどを仮説ベースで作って提示していきました。

ターゲットや、独自インクの持つ高い機能性を明確にして、機能価値や情報価値から導かれるメッセージ性を整理していきました。そして、コミュニケーション戦略についていくつかの方向性を提案しました。

他人目線の「相対軸」ではなく、自分目線の「絶対軸」

── ブランドのコアの部分はどうやって決められたのでしょうか?

そのあたりはロジカルに、市場調査やデータを積み重ねることで探っていきました。調査をして、アイライナーを使っている人たちがどういう気持ちになってくれたら、既存の市場でブランドを確立できるのかを考えていきます。そこからブランドコアバリューが見えてきました。

コアバリューをもとに議論を重ねた結果、掲げたコンセプトが「Absolute Beauty(アブソリュートビューティー) -その上質を、すべての女性の常識に-」です。(※ジェンダーフリーの流れを踏まえ、今年春から「すべてのひとの常識に」へと表現を変更しています。)

このコンセプトを掲げていくにあたり意識したのは、自分が美しいと思える「絶対軸」の目線を提案することです。

今ドラッグストアで売っているアイライナーは、多くが「モテ」を売りにしているものが多いのですが、そういうものとは一線を画す価値を提案する。そのコンセプトをクリエイティブに落とし込み、パッケージデザインの発想につなげていきました。

── 他人のために美しくメイクするのではなく、自分のために楽しもうというメッセージが込められているんですね。

他人目線の「相対軸」ではなく、自分目線の「絶対軸」に引き寄せるというのは、ものづくりに対する熱量を伝えることができるコンセプトだと思います。「素晴らしい製品力があるのだから、このブランドにしかできないことをそのまま出せばいいんだ」というのが、クライアントに響いたのかもしれません。

実は今回、「スキルレスライナー」という商品名を含めて、最初に提案した案がほぼそのまま通ったという珍しいパターンなんです。ブランドストーリーは、初期段階でほぼ完成していました。

── ブランドの本質を最初から的確に捉えられていたんですね。ちなみに、今回のプロジェクトではどのように社内で役割分担されていたのでしょうか?

我々の組織はプロデュースディレクション系とソリューション系の2つに大きく分かれています。そしてソリューション系の中にデザイン系と言葉系があります。

僕がデザイン部のトップで、プロデューサーの小林明日香(@asuca_mcl)がロジックの部分を担当してくれました。デザインとロジック、2つのチームがあるのがセイタロウデザインの強みでもあります。

── デザインチームとロジックチームはどうやって連携していたのでしょうか?

コスメやファッション系の案件は、先にマーケティングなどのロジックを積み上げてからデザインを作るようなやり方では、いいものが生まれにくい気がしています。

今回はデザインチームがイメージボードを作り、純粋に「かわいい」「美しい」と思うものを出して、後からロジックとつないでいきました。マーケティングなどのデータの部分は、最終的な段階で緻密に組み立てます。

── ロジックチームは、今回はどんな提案を打ち出していたのでしょうか?

ロジックチームは、3つの軸を打ち出してくれました。まず「商品開発力の優れたメーカーが初めて出すブランド」という軸。それにプラスして「自分軸を持つ人が選ぶ、本当にいい商品」であるという軸。また、アイライナーはブラウンとブラックの基本色だけを使われている方が多いのですが、「アイシャドウのように多色を楽しもう」という3パターンの提案をデザインに盛り込むようにご提案しました。

どこまで飛躍できるか

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── パッケージの透き通った花の写真が印象的ですが、どうやって着想されたのでしょうか?

これは花を産業用CTで撮像した写真なんです。「絶対軸」をテーマに、一般的に外側を装う化粧品に対して内側を見せる、常識を逆手に取ったコミュニケーションをとりました。

私はJMCという会社の取締役兼CDOもしているのですが、その会社が日本で初めて産業用のCTスキャンを入れたタイミングだったんです。あの時点でこのクリエイティブを作ることができたのは、恐らくうちだけだったと思います。

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── 他にもパッケージでこだわった部分はありますか?

ユーザーの気持ちになって、一番欲しいものをデザインすれば絶対売れるはずですから、パッケージについてはかなり分析しました。ドラッグストアでアイライナーを2、30本買ってきて、実際に自分で塗って試してみました。

パッケージも「これ使いにくいな」とか「これは響かないな」というのを体感して取り込んでいきました。昔、演劇をやっていたこともあり、ユーザーの気持ちに憑依したい。超体験型なんです(笑)。

パッケージで重要なのは「アフォーダンス」。どうやって無意識をデザインできるかが勝負なんです。思わず手にとって開きたくなる、それを形にするために左下半分はグロスで右上はマットな手触りと、材質が分かれるデザインにしています。

── パッケージ写真の撮影や制作で苦労された点はありますか?

クライアントから全幅の信頼をいただいていたので、非常にスムーズでした。途中から、クライアントの担当者の方がこのデザインの1番のファンのような感じでした(笑)。

「お客様が正解を持っている」案件ではない分、僕らが最後まで走り切れるのかどうかが重要で。自分たちで全力で引き上げていかないと、高いレベルに到達できないわけですから。

そういう意味では「あなたたちはどこまで飛躍できるんですか?」と試されているような、そんな気持ちで立ち向かっていったプロジェクトです。商品は間違いなくいいものなので「売れなかったら我々の責任だな」というプレッシャーがありました。

クリエイティブとして最も正しい形

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── 実際に「スキルレスライナー」がリリースされると、爆発的なヒットとなりました。

すごい人気になったと聞いて、本当によかったなと思いました。SNS、とくにインスタグラムで「使いやすい!」と投稿してくれる方が多いんです。

まずはオンライン販売で実績を積むことが目標だったのですが、楽天市場でもデイリーランキングやウィークリーランキングなど複数の部門で1位になりました。クライアントにとても喜んでいただけて、「このパッケージにしてくれてよかったです」と言っていただけたのがうれしかったですね。

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── 改めて、プロジェクトを振り返っていかがでしょうか。

「100%、私たちに責任がある」というのは、クリエイティブとして実は最もいい結果が出やすいんです。本当に100%お任せいただいた上で結果が出なかった事例は、過去セイタロウデザインにはありません。

ベストな形でブランドの初期段階から任せていただいて、それにクリエイティブで数字的な成果としてお返しすることができました。理想的なパートナーシップができたのではないかと思います。

── 非常にいい形で全力を出し切ることができたんですね。

完全に任せていただけるといい結果を出すことができますし、やりきることで他のいい仕事を呼んでくれるのでありがたいですね。

それが理想的な循環だと思います。それで淘汰されるのであれば、クリエイティブが負けたということですから。クリエイティブとして最も正しい形を世の中に提示できた商品だったのではないでしょうか。

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セイタロウデザインは、アートディレクターの山崎晴太郎を中心に、ブランディングを軸としたCI・広告・映像・WEBサイト、プロダクトや建築とあらゆるチャネルを横断し、“線のデザイン”を提供するアート&ブランディングブティックです。